雪化粧

また、雪が降って来た。
今日は七草粥を食べた。古くからのならわし。
冬のはじめに生まれたせいなのか、冬には愛着がある。冬が好きなんて変わってるかもしれない。
でも、真っ白な世界が、静かで、この上なく美しくて、すべての喧噪をかき消してくれるようで。悩みも、雑踏も…。
どこまでも白く、どこまでも静かで。


子供の頃は夏がいちばん好きだった。にぎやかで、活気があって、夏休み、海、祭り。
いちばん嫌いなのが秋だった。物悲しくて、さびしくて。子供の頃快活だった自分は秋がいちばん嫌いだった。
でも、夏ほどじゃないけど冬は好き。行きつくところまで来てしまった原点という感じもして。


一四九八年、イタリアフィレンツェサヴォナローラは処刑された。ヨーロッパを席捲する宗教改革の二十年前のことだった。
一四九二年、豪華王と称されたロレンツォが死去し、二十歳の長男ピエロがメディチ家の跡を継いだのだった。
一四九四年八月、大国フランスのシャルル八世が大軍を率いてナポリ王国を支配するためにイタリアへ南下した。
ピエロはシャルル八世にフィレンツェを通らずに南下するよう説得するが失敗する。
これに市民の反感を買い、祖国の父と言われた老コジモが追放から帰還して六十年後にメディチ家はピエロの代で再び追放されることになった。


老コジモ以来のメディチ家支配は終わり、フィレンツェは共和国の新体制を決めることになる。
ここで共和国の実権を握ったのは、サン・マルコ修道院長のジローラモサヴォナローラであった。
サヴォナローラ神政政治はやがて市民の反感を買い、弟子のドメニコとともに逮捕された。
一四九八年五月二十三日、シニョリーア広場で、絞首刑が執行され、その後火刑にされ、死灰はすべてアルノ川に流されたという。
そして今日も海はうなりをあげていた。