その人の歩む道

よく、“それはお前だけじゃないんだ”

って、決まり文句のようにたいていの人は言うけど、

それは心も身体も健康で元気だから、

自分はそういう痛手を負ったことがないから、

力任せにそういう言葉が出て来るんだと思う。

ある時、ある友人がこう言った、

“屈辱のなかにも生まれて来ることがあるんや、それはお前だけじゃない、
あまえてたらあかん…”

と、たしかこのように言ってくれた。

俺を励ましてくれるその気持ちはうれしかった。

でも、どうだろう…

人はみな、顔がちがうように、

その人の価値観、物事の受け取り方、感じ方、その人の性格、性質、

ちがうじゃないか。

十人いたら十通りの、百人いたら百通りの、千人いたら千通りの人生があるじゃないか。

同じ物事、出来事でも、その人によってどう思うのか、

そしてどう“感じる”のか。

その人にしかない人生だと思う。

なにかの痛手を負った時、どういう心の状態になるのか…、

そして、、、どういう身体の状態になるのか…

わからないのだと思う。

心も身体も元気だから、“お前だけじゃない”なんて言葉が出て来るんだと思う。

“お前だけじゃない”なんて、

それじゃあ、あなたがそんな痛手を負ったこともないくせに、

“お前は人並み程度だ”って、上から踏んづけてるようなものだ。

あまえているか、まちがっているか…そう思うならそれでいい。

“お前だけじゃない”っていう文句は自分自身好きじゃない。

その人にしかない人生だから。

その人にしか感じることのできないことだから。

簡単に他人の人生と比較することができるのか。

俺は、できないと言いたい。

ある時、親がこう言った、

“マイナスをプラスにして行くことはそう簡単なことじゃないけど、
できないことでもない”…と。

すごい言葉だと思った。

でもね、今の自分には、そう簡単には出来ない。